紹介は人間関係を作っていく上で、よく利用される方法です。人間は知り合いとだけ付き合えばよいわけではなく、いろいろな機会に知らない人と知り合いになることで、社会生活を複雑にしていきます。ですから、必要な社交関係や望ましい友情関係は人と人とがうまく知り合うことから発展するのです。
第一節 自己紹介
初出勤(はつしゅっきん)の日や歓迎会、訪問先など、自己紹介をする機会は案外多くあります。
苦手だという人も多いかもしれませんが、自己紹介は自分をアピールする絶好のチャンスです。上役や先輩、訪問先で好印象を持ってもらえれば、今後のつきあいもうまくいくでしょう。緊張することはありません。固くなりすぎず、ハキハキと自分をアピールしましょう。
自己紹介を始めるときは、まず立ち上がっておじぎをします。緊張してしまったら、深呼吸(しんこきゅう)をして間を置いてみると落ち着きます。大きな声で元気よく、気持が高揚(こうよう)しているときはゆっくりと話すくらいで、ちょうどよいものです。
名前はフルネームで名乗り、必要なことを簡潔(かんけつ)に話します。趣味かちょっとした自己アピールを一言加えると、それをきっかけに相手とコミュニケションがとりやすくなることもあります。おじぎで締めくくります。
歓迎会などでインパクトをあたえようと、ジョークやギャグを連発(れんぱつ)するのは逆効果です。学生時代のくだけすぎたノリで臨(のぞ)んでは「学生気分が抜けていない」と軽く見られることもあります。
TPOに応じた言動(げんどう)をするのが会社人としての条件といえます。
自己紹介例
青森大学出身の伊藤一雄(かずお)です。高校時代からずっと応援団をやっていたので、声がやたらデカイです。電話の声が大きくてご迷惑をおかけしたら、ひと言注意してください。△△部には先輩も何人かいらっしゃるので、そのご活躍(かつやく)ぶりを目標に頑張ります。よろしくお願いいたします。
第二節 紹介の仕方
紹介はパーテイなどの集まりの席で、初対面同士を引き合わせる場合、サークルへ新しいメンバーを紹介する場合など、いろいろな場面があります。紹介する時は名前だけでなく、その人の所属する会社や組織、自分との関係などを言(い)い添(そ)えるようにすると、より親切です。ただし、あまり知らない相手をむやみに紹介すると、かえって迷惑をかけることもありますから、その人の立場や気持ちを配慮して、無責任な紹介にならないように注意します。
1、紹介の順序
紹介では、だいたい決まっている形式を守(まも)ることが必要です。初対面の人どうしを紹介する場合は、その順序が重要です。紹介の順序は、基本的には目下の人を目上の人に紹介します。同じ会社の人、自分の近い身内はいつも目下であると覚えておくようにしましょう。また、人数が多ければ多いほど複雑になりますから、以下の原則を頭に入れておく必要があります。
① 自社の人と他社の人では、自社の人から紹介します。
「ご紹介させていただきます。こちらはわたくしどもの課長の○○です。」自社の人が複数であればまず自社の上司から紹介します。「私どもの部長の○○です。」と言うように、役職名を頭につけて客に紹介します。他社に同行者を伴って訪問した場合は、まず「当社の○○課の○○です。」と言って同行者を紹介します。客のほうも、「○○会社の部長の○○様と課長の○○様です。」と、上位の順に一人ずつ紹介します。また、社外の人に紹介する時は、上司であっても「さん」づけしないで、呼び捨てにするのが正しいマナーです。
② 年少者と年長者では、年少者を先に年長者に紹介します。
「吉田先生、大学の時の友人の池田です。」
「池田君、弁護士の吉田先生です。」
③ 役職が低い人と高い人では、役職の低い人を先に高い人に紹介します。
「吉田先生、○○会社の総務課長(そうむかちょう)の○○さんをご紹介させていただきます」
④ 男性と女性では、男性を先に女性に紹介します。
「木村さん、同じ会社の伊藤君です。あなたにぜひ引き合わせてくれと言いますので-。」
3.5
⑤ 身内の人と他の人では、身内の人を先に紹介します。
「本田さん、姉の真由美(まゆみ)です。三年前に広大の英文科を出て、ただいま花嫁修業中です。」
身内の紹介では、「姉です。」とか、「妻です。」とだけ紹介することは、相手に失礼になりますので、忘れずに名前を付け加えて紹介するようにします。
2、紹介の場面
紹介の場面に応じて、紹介の態度や仕方も違います。
① オフイス
オフイスでの紹介は自分の部局や課の同僚をほかの部局や課の人に引き合わせる場合と、ほかの部局や課の人を自分の部局や課の人に紹介する場合などがあります。紹介の目的によって、簡略な紹介と正式な紹介があります。簡略な紹介なら、引き合わせる用件の内容、所属の課および姓名ぐらいを告げます。
② 会合やパーテイ
自分が主催者(しゅさいしゃ)になったパーテイなどでは、初対面同士の相客を紹介するのは主催者の役割です。紹介する時は名前だけでなく、その人の趣味とか、出身校なども付け加えると、話の糸口(いとぐち)になり、紹介された人同士の会話もはずむようになります。
③ 公共施設(こうきょうしせつ)
博物館や劇場などでは知人と会った時は、路上での場合と同じで、連れの人と相手とを軽く引き合わせたのち、別々の行動をとります。相手が自分と親しかった場合は、連れの意向を確(たし)かめたうえ、「ご一緒にどうでしょうか。」、「あとでご一緒になりませんか。」と言います。その時なり、あとでなり、同一行動をとります。
④ 車中
電車や列車の中で、たまたま知り合いに出会った時は、連れの人と相手との気持ちを推測して、名前と勤め先、または、仕事ぐらいを軽く紹介するか、さらに趣味などまで細かく紹介して、友人関係に進ませるかを判断します。長い列車の中では、隣や同席の未知の人に自己紹介する場合は「わたしはどこそこまで参りますが、あなたは。」、「お天気がよくて、助かりますね。」とかの会話から自己紹介へ進めます。
⑤ 路上
道路を連れと歩いている時、知っている人と行き会うことがあります。連れの人と相手とが前々から知り合いになりたいと望んでいる時には、よい機会ですから、正式に紹介します。そうでない時には、自分と相手のあいさつのついでに、「友人のだれそれさん。」、「同じ会社のだれそれさん。」と軽く連れの人や相手をお互いに紹介して、そのまま別れます。
第三節 名刺交換の仕方
仕事の上で、初対面の人と出会う時、まず行うのは
名刺交換です。名刺はその人の身分と人格を代表するもので、単なる紙切れなどと思わずに大切に取り扱うようにしましょう。現在の日本では、名刺の使用が多くなってきて、自分の氏名、職務よりも職業の業務内容を宣伝した形となっていますから、ビジネスの世界では名刺は必要不可欠(ふかけつ)です。
1、名刺交換の順序
① 1対1の時
目下の人から目上の人へ、訪問の場合は訪問した側から先に差し出すのがマナーです。
② 相手が複数の時
役職が上の人から順に渡します。
③ こちらが複数の時
上司や先輩が先に名刺を交換してから、続(つづ)いて行います。
④ 相手のほうから先に差し出された時
あわてて同時に交換せずに、まず相手の名刺をきちんと受け取ってから「申し遅れました。」「ごあいさつが遅れ、大変失礼いたしました。」と一言を添(そ)えて、自分の名刺を出します。
2、名刺の差し出し方と受け取り方
① 差し出し方
名刺の交換は、名刺を両手で胸の高さに持って、立って行います。あらかじめ椅子に座って相手を待っていた場合でも、立ち上がって行うのが礼儀です。差し出す時に両手で、文字に指がかからないように持ち、「○○会社の○○です。」と社名、部署名、名前を名乗りながら相手が読みやすい向きで出します。名前は必ずフルネームを言うようにします。社外の人に対しての自己紹介は人間関係を広くし、仕事を進めるうえで重要ですから、明るい声で、はっきりと話し、表情や態度にも気をつけるようにします。読みにくい名前は説明をしながら渡します。「私の名前が読めますか。」「よく読めましたね。」など、相手を試すようなことは絶対にすべきではありません。また、折れたり汚れた名刺を差し出すのは相手に失礼なことですから、いつもきれいな状態を保つためにしっかりとした名刺入れを用意しておきます。名刺入れは上着のポケットなどすぐ取り出せる場所に用意しておきます。
訪問先で名刺を忘れてしまった場合は、けっして忘れたことは言わずに「大変申し訳ありません。今名刺を切らしております。」と言います。名刺の持ち合わせがない場合は「あいにく名刺を切らしていますが、○○課の○○です。」と、所属と氏名を名乗ります。いずれにしても、名刺を切らしたり、忘れたりすることはビジネスマンとしては、失格ですから、人に会う時は名刺を忘れたり、切らしたりすることがないように注意します。
② 受け取り方
名刺を受け取る時には必ず両手で受け取り、「頂戴いたします。○○様ですね。」「○○様ですね。よろしくお願いします。」と相手の目を見ながら、名刺の名前を復唱(ふくしょう)します。
読み方が分からない時は勝手(かって)に判断して、間違った呼び名で読んでしまうことは大変失礼な行為ですから、「お名前はどのようにお読みすればいいのですか。」「失礼ですが、何とお読みすればよろしいのでしょうか。」とその場で尋ねます。面談中、相手の名前を忘れたり、呼び間違えたら大変ですから、受け取った名刺はすぐ名刺入れにしまわずに、テーブルの上に置いておけば、相手の名前を忘れてしまった時に確認することができて便利です。
名刺は交換した相手が複数の場合は座席(ざせき)の順番に並べれば、顔と名前を覚えやすくなります。テーブルの上が必要書類などでスペースがない場合は軽く押しいただいて、名刺入れにしまってもかまいません。また、打ち合わせが終わったら、受け取った名刺の裏に会った日付、用件、特徴などをメモしたりしておくと、次回会う時の資料にもなり、便利です。名刺はあとで名刺ホルダーなどを利用して、五十音順、業界別、地域別などに整理したり、パソコンや携帯電話に連絡先を登録するなどしておきます。同じ企業の人の名刺が複数枚あれば、役職順など並べ方に工夫が必要です。
③ 名刺交換でのタブー
● 汚れた名刺を渡す。
● 片手で受け取る。
● 指が相手の名前にかかって隠したりする。
● いただいた名刺をもてあそんだり、折りたたんだりする。
● いただいた名刺にその場で何か書き込む。
● いただいた名刺を忘れて帰る。
● いただいた名刺の上に書類などをのせたり、床に落としたりする。
● いただいた名刺を無造作にポケットに入れたりする。