首页 资料下载 天声人语 20120121 ひらがなはやさしい

20120121 ひらがなはやさしい

来源:朝日新闻 作者:日语港 时间:2012-03-08 阅读:3298

 ひらがなはやさしい。易しいだけでなく、優しい。どの文字もアメ細工の曲線美、連ねればひと筆書きの甘露となって流れる。平安時代の初期に生まれ、主に女性が用いたので女手(おんなで)とも呼ばれた▼その47字を重複なしに並べた「いろは歌」は、平安から昭和の世に至るまで、手習いの友だった。〈色は匂(にほ)へど散りぬるを〉と口ずさみ、「いろはにほへとちりぬるを」とつづる▼歌の一部を墨書きした平安後期の土器片が、三重県明和(めいわ)町の斎宮(さいくう)跡(あと)で出土した。指先ほどの字で「ぬるをわか」、裏には「つねなら」。ひらがなで書かれた歌詞では、最古の確認例という。本日より、斎宮歴史博物館で公開される▼斎宮には、伊勢神宮に仕える皇女が代々起居した。割れて見つかった素焼きの小皿は、女官の一人が「いろは」の練習に使った一枚とみられる。紙が貴重な時代である。捨てる前の器を流用したらしい▼500人が働く斎宮に、女官は40人ほどいたと伝わる。帝(みかど)の命(めい)により、京から赴任してくる皇女様。教養を高めて、しっかり支えなきゃと、地元雇いの娘たちは「職場研修」に励んだに違いない。〈我が世誰ぞ常ならむ〉をつぶやきながら、一心に筆を運ぶ垂れ髪を思う▼先生は皇女その人かもしれない。覚えたての字を、女官は身内に教えもしただろう。和歌や日記の宮廷文化が、地方に広まる様が見えてくる。ざらりとした土肌に淡く残る、たおやかな筆跡(ふであと)。一人なぞって、浮世の憂さをしばし忘れた。ひらがなはやさしい。

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